休薬(ケモホリデー)という選択肢

妻が主治医から「休薬」という選択肢を提示されました。

 

あまり一般的ではないようですが、「ケモホリデー」という言葉もあるようです。

恐らく「ケモ(化学療法)」と「ホリデー(休日)」を組み合わせた言葉なのでしょう。

www.kango-roo.com

 

「ケモホリデー」で検索してみると、ヒットするのは個人のブログが多く、医療用語として定着しているわけではなさそうです。

 

「ケモホリデー」について書かれたブログを1つ紹介しておきます。

ameblo.jp

 

休薬(ケモホリデー)という選択肢

妻が現在使用している抗がん剤は、使用可能な量の限界が定められているものです。

その治療が残りあと数回となり、そろそろ次の抗がん剤について具体的に話すことになるのだろうと予測していた診察で、主治医から思わぬ提案をされました。

「思い切って休薬してみるのはどうですか?」というのです。

 

これまでまったく頭になかった選択肢なので、患者である妻も付き添いの私もとても戸惑いました。

まず頭に浮かんだのは、以下に引用するような状況です。

減量して効果がなくなれば、それ以上は「毒」を投与するのと同じことですから、中止すべきです。その場合、休薬も選択肢の1つです。休薬している間にがんが進行する可能性があることを説明し、それでも患者さんが休薬を望めば、そのようにします。

www.akiramenai-gan.com

 

しかし、主治医の話をよく聞くと、どうやら今回の提案はそれとは違うようでした。

  1. 治療の目的はQOL(生活の質)の向上である。
  2. 最近数回の検査では目立った変化が見られず、状態が安定していると考えられる。
  3. 少しの間、抗がん剤を休止しても、すぐには病変が起こらない可能性が高い。
  4. いずれは休みたくても休めない状況に陥る可能性がある。
  5. 治療を頑張っているご褒美として、休めるうちに短期間でも副作用に悩まされない生活を送ってはどうか。

という主旨のようです。

 

化学療法をカードゲームに喩えるとすると、「休薬」は「あえて投薬をしない」というカードか、あるいは「カードを切らずにパスをする」という戦術と言えるでしょうか。

今回の問題は、その選択をしたときに「状況が悪化する可能性は高くはないが、確実に低いとまでは言えない」ということです。

 

患者の心理的な負担としては、決められたフローチャート通りに治療を進めてくれるほうが楽かもしれません。

「腫瘍が大きくなっちゃう可能性はあるけど、ちょっと治療を休んでみようか」などと、気軽に決断できるものではないでしょう。

なんと悩ましい選択肢でしょうか。

 

しかし、主治医の言葉からは、医者として最大限の配慮をしてくださっていることがうかがえます。

腫瘍が増大するかもしれないというリスクを負いながら、投薬を休むという選択肢を提示するのはとても勇気の要ることでしょう。

万一急変するようなことがあれば、その責任は重大です。

 

もちろん説明を尽くした上で、患者自身が選択をするわけですから、その選択自体には医者は直接的な責任を持たないでしょう。

ですが、もしも病状が悪化すると、説明の仕方や患者の受け取り方によっては、訴訟のような事態に発展しないとも限りません。

 

恐らくはそのようなリスクを承知の上での提案でしょうから、本当に患者のことを考えてくださっているように思います。

せっかくの提案ですので、思い切って少し休薬してみることにしました。

ただ、不安はどうしても拭いきれないので、相談のうえ、普段はやっていないレントゲン検査で経過を観ることにしました。

 

・・・その決断から数週間が経ち、今の心境としては「休薬」をして良かったと思っています。

この数ヶ月間の妻は、副作用に悩まされる期間が数週間続き、ようやく副作用が薄れてくると、すぐに次の治療が目前に迫ってきて心理的な負担になるというサイクルで、QOLはあまり高いとは言えませんでした。

それでも妻は限界まで頑張ってしまう性格なので、もしかしたら主治医はそのようなことも考慮に入れて「休薬」の提案をしてくださったのかもしれません。 

この連休は久々に外へ出て庭仕事をし、外出にも前向きになれたようです。(もちろんコロナの不安を抱えながらではありますが。)

 

妻は「思ったほどだるさが抜けない」と不満を漏らしていましたが、夫の目から見ると、確実に改善されたように見えます。

そういった客観的な評価を伝えることで、プラスの面に目を向けられるようになり、妻自身もメリットを感じられるようになったと思います。

こういったことが、「第二の患者」が果たせる役割のひとつだと思っています。