デルクステカンという新しい抗がん剤が再発乳がんに使えるようになったようです。
適応になる場合は、効果が期待できそうです。
独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、奏効期間中央値は14.8ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。(https://www.carenet.com/news/general/carenet/49785)
手札が増えることを願って
手術による完治が見込めない場合の抗がん剤治療は、喩えるなら「限られた手札をどれだけ効果的な順序で切っていくか」というゲームのようです。
勝利条件が厳しいゲームであるため、多くの場合、ゲームの目的は「できるだけ長くゲームを続けること」となるでしょう。
このゲームは人によって手札の種類や枚数が異なります。
副作用の出方や患者を取り巻く環境などにも差があるため、1つの攻略法だけで全てをカバーすることはできません。
強力なカードだからと言って必ずしも使えるわけではなく、また、実際にカードを切ってからある程度の時間が経過するまで、その効果が判明しない場合もしばしばです。
基本的には統計に基づきながらも、一人ひとりに合わせて戦略や戦術を修正することが求められる、難易度が高いゲームです。
妻は既に何枚かカードを切り、中には奏功しなかったカードもあります。
あとどれくらいのカードが残されているのでしょうか。
主治医にはある程度分かっていることなのでしょうが、恐ろしくて確認することができません。
まだ何枚も残されているはずだと信じて、このゲームを続けています。
そんな中、手札が増えるというのは嬉しい報せでした。
現在使用中の薬が、使用可能な量の上限に達しつつあり、効果も薄れてきた妻にとって、その恐怖を少しでも和らげることができる朗報です。
「良いお薬がもうすぐ使えるようになります」と教えてくださった主治医の声もほんの少しだけ明るいトーンに感じられました。
厳しい現実も伝えなければならないお仕事ですから、努めて感情を抑えて話すよう訓練をなさっているのでしょう。
なかなか気持ちを推し量ることは難しいのですが、狭いレンジの中で少しだけトーンが変わるような気がします。
前述のデルクステカンが適応にならない方もいらっしゃるでしょう。
でも、強調しておきたいのは「手札が増えることがある」という事実です。
しかも、そのペースは年々速くなってきているという話も聞きます。
ある看護師さんが「1年に1つくらいは新しい薬が出ているように思う」と仰っていました。
時には虚しく感じられ、手札が減っていくことに恐怖を感じざるを得ないゲームですが、投げやりにならずに続けていれば、手札が増えていく可能性があります。
逆転勝利をもたらすほどの切り札が舞い込んでくる可能性もゼロではありません。
それは楽観できるほど高くはありませんが、絶望の中にもひとすじの希望を見出せるほどの可能性はあるはずです。
諦めずに治療を続けていきましょう。