行きつけのお菓子屋さんで

行きつけのお菓子屋さんで「失礼ですが、奥様は・・・」と聞かれた。 どう答えたら良いかと少し言い淀んでいると、事情を察してくれたようで、弔意を示してくれた。 下世話な好奇心からではなく、純粋に気遣ってくれての言葉だと感じた。 妻とは何年もの間、…

スパイス

年末の大掃除で賞味期限切れのスパイスを大量に捨てた。 料理好きだった妻がせっせと買い集めていたものだ。 妻が元気だった頃はいろんな料理を作ってくれた。 いつも美味しかったが、たまに普段の水準を遥かに超えた美味しい料理があり、もう一度作って欲し…

現在と過去

妻の実家に菓子を送った。 一周忌に合わせて香典をもらっていたので、その返礼として、妻と買い物に行くたびに買っていたメーカーの菓子の詰め合わせを送ったのだ。 数日経って、義母から電話があった。 体調がすぐれないと聞いていたが、元気そうな声だ。 …

携帯電話の解約

妻の携帯電話を解約した。 もしかしたら妻の知人から連絡があるかもしれないからということを口実にして、解約せずにいたのだが、たまに間違い電話がかかってきたくらいで、まともな連絡は1つも無かった。 妻はLINEもやっておらず、滅多に携帯を使って…

最後の手紙

一周忌から一夜明け、いつもと変わらない日常を過ごさなければならなくなった。 いつものように仕事へ行き、帰宅していつものように過ごす。 寂しさは消えないが、声を上げて泣くことはなく、平穏なふりをして過ごしていた。 そして、毎週のルーティンとして…

1年

妻が旅立って1年が過ぎた。 正式な法要はしないのだが、自分なりに弔っている。 いつもより少し多く花を飾り、妻が好きだった菓子を遺影の前に供え、生前、美味しいと言ってくれた焼きそばを作って独りで食べた。 両親とメッセージのやり取りをし、義母と電…

気乗りしない帰省

久しぶりに実家に帰省した。 日帰りできる距離なのだが、どうも気乗りせず、足が遠のいている。 元気な姿を見せて安心させたい・・・とは思うのだが、実家へ行くとどうしても妻と2人で訪れた時のことを思い出してしまい、なかなか笑顔を作れない。 最後に2…

最後のカレー

妻が遺してくれた最後のカレーを食べた。 優しい味がした。 それは妻が意図的に遺してくれたものではなく、まだ妻が普通に料理をできていた頃の、何でもない普通の日に作った普通のカレーを冷凍していたものだ。 カレーの他にも、キーマカレーやらハヤシやら…

クレジットカードの退会

妻のクレジットカードの退会手続きをした。 すぐに退会しなかったのは、諸々の引き落としが残ったままだとその手続きが面倒そうだったので、それらの解約やら変更やらの手続きがすべて終わってからにしようと思っていたからだ。 最後に残っていたのはメール…

ゴミ収集日の憂鬱

独りになってからゴミの量が減った。 生活者が一人減ったのだから、それに応じてゴミが減るのは当然のことなのだが、収集日が近づくと、3分の1ほどしか溜まっていない45リットルのゴミ袋を見て寂しくなる。 以前は一杯になっていたのに。 単純計算では半…

「つまらない」ということに気づく

妻を看取ってからもう2ヶ月以上経つが、いまだに時々涙が出る。 今日は風呂に入っている時、「つまらないなぁ・・・」と独り言を呟いたら涙が溢れてきた。 そうだ、自分はつまらないと感じているんだ。 こんな簡単なことに今さら気づいた。 妻とは何でも話…

胡蝶の夢

夢を見た。 妻に伝えたかった言葉、それを伝えられないまま妻を看取った。 悲しい気持ちで目覚めると隣に妻が寝ていた。 タイマーで点いたテレビの音声が居間から流れてくるが、今すぐにでも伝えたい。 両手を妻の頭に添え、額を寄せてその言葉を囁いた。 「…

別れを告げる日

グリーフ体験記⑨

おちょぼ口

グリーフ体験記⑧

「第二の患者」について

がん患者の家族は「第二の患者」ともいわれます。 このブログはもともと「第二の患者」としての自分を奮い立たせたり、悩みを吐露したりするためのものとして始め、同じような境遇にある方とのゆるい繋がりを持つことも目的としておりました。 その後、状況…

妻からの手紙

グリーフ体験記⑦

捨てられない執着心

グリーフ体験記⑥

一夜明けて

グリーフ体験記⑤

「その時」の後

グリーフ体験記④

その時

グリーフ体験記③

コロナが無ければ・・・

グリーフ体験記②

入院の日

グリーフ体験記①

ご報告

妻が旅立ちました。 もう少し入院生活が続くと思って、いろいろ買い揃えたのですが、わずか1泊で入院生活は終わりました。 葬儀やらなにやらに向けて冷静に事を進めたり、ふいに襲ってくる悲しさや孤独感で涙を流したりと、制御し難い感情の波に揺さぶられ…

妻の入院

妻が入院しました。 恐らく、もう自宅へは戻れないでしょう。 徐々に弱っていき、ほとんど会話がなくなっても、今朝までは側にいた妻。 独りになることがこんなにも辛いとは思っていませんでした。 付き添いを終え、帰宅するまでは、残っている野菜で料理で…

冬物のクリーニング

また自分語りをしてしまいました。 よろしければ、ご覧ください。

妻のお節介

ふと思い立って、スタイルの違う記事を書いてみることにしました。 「第二の患者」としての自分語りです。 よろしければ、お付き合いください。

最悪ではないけれど

先日来、妻が胸痛を訴えていましたが、検査の結果、その原因は胸水ではありませんでした。 痛みの原因として考えられるのは、増大した腫瘍が胸膜に触れて刺激している可能性があるとのことでしたが、画像からはその可能性は低く、心因性かもしれないとのこと…

伝えられないストレス

妻は自身の病気についての情報をネットでは調べないようにしています。 ネガティブな情報にばかり目が行き、悪影響の方が大きいからです。 不明な点は主治医に直接たずねるようにしているのですが、それまで待てずにどうしても知りたくなった時は、代わりに…

近況報告

皆様いかがお過ごしでしょうか。 我が家は穏やかな年末年始を過ごしております。 たまたまですが、妻の抗がん剤治療の間隔がうまく空き、副作用が抜けた状態で新年を迎えることができました。 昨年の後半、妻が体調を崩してちょっと心配した時期がありました…

「治る時代」が早く来て欲しい

画期的な研究を報じる記事がありました。 finders.me 本当の意味で「治る時代」が到来するかもしれませんね。